マッサージ効果の科学的解明に成功!

筋肉再生のメカニズムとマッサージの役割が明らかに

私が所属している全国鍼灸マッサージ師協会から、ハーバード大学の研究チームによる研究で、マッサージ効果の科学的解明に成功したという情報が届きました。

マウスによる動物実験によれば、マッサージは炎症を引き起こす免疫細胞や炎症物質を「洗い流す」ことで、筋肉を損傷したマウスの回復力を2倍にし、新たに再生する筋繊維の質もより強固になるとのこと。また研究によって「最も優れた効果を得るには筋肉損傷が起きてから3日目以降に炎症因子を除去するといい」ことも判明します。

私は20年以上、マッサージによるコンディショニングを行っているなかで、マッサージが損傷した筋肉の回復に効果的なことを経験的に知ってはいました。ですが、マッサージの医学的・生物学的な効果と仕組みが、ここまでハッキリと再現性をもって示されたのは今回の研究がはじめてです。出展元の論文をまとめたものをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみて下さい。

目的:マッサージの効果を科学的に証明する
機械的刺激は骨格筋の修復を促進することができる

世界で活躍する一流のアスリートたちはマッサージの効果を実感し、実践している。これまではその効果に関する科学的な解明はなされていなかったが、このほど、ハーバード大学の研究チームが、そのメカニズムの解明のため、マウスに用いる特殊小型装置を開発し、マッサージの効果を分子レベル、細胞レベルで科学的に立証することを目指した。

方法・結果

マウスの脚を固定する拘束具とマウスの脚をマッサージするシリコン製のヘッドを取り付けた装置に、脚の筋肉を損傷させたマウスを設置。マウスの筋肉に14日間、一定の間隔で同じ強度の力を繰り返し加え続け、超音波の画像データで組織の"ひずみ"を分析。

マッサージを受けたマウスと受けていないマウスの比較

筋肉の再生速度が2倍になり、組織に瘢痕(消えにくい傷跡)が残る可能性を大幅に減少させることを発見。筋肉を摘出した断面図の比較でも、装置による治療を受けていたマウスは、そうでないマウスに比べて、筋繊維がより太くなっており、治療は筋繊維の強度回復にも有効であることが示された。

分子・細胞レベルでのメカニズムの解明 ~分子レベルでの違いを比較~

マッサージが3日間行われたマウスの筋肉では、炎症物質(サイトカインやケモカイン)が劇的に低下、炎症物質が呼び込む免疫細胞、好中球の数も大きく減少していると判明。これらの結果から研究者たちは、マッサージによって炎症物質や免疫細胞が筋肉から「洗い流された」ことが、回復力の強化につながったと考えた。

仮説の裏付け ~マウスの筋肉の元となる細胞(筋前駆細胞)に好中球を加えるという細胞レベルの実験を実施~

結果、好中球は筋肉の元となる細胞(筋前駆細胞)を増殖させる能力が高い一方で、増えた細胞が適切な筋肉の形に変化する(分化する)速度を低下させていることを発見。

用済みの炎症因子(好中球など)を除去することが回復を改善するのかどうか?

マウスのマッサージ実験を繰り返すなかで、研究者たちは炎症因子となる好中球の排除が、筋肉の損傷後3日目以降に開始されることが、最速の治療に結びつくことを発見。

好中球の排除 ~損傷から3日経過したマウスの血液を操作し、マッサージを行わずに好中球だけを血中から排除~

結果、好中球の排除を受けたマウスは、そうでないマウスに比べて筋繊維のサイズをともなった大きな強度回復を示した。マッサージの代わりに、マッサージがするはずだった好中球の除去でも回復が改善されたことが判明。

まとめ

本研究により、筋肉に重傷を負ったマウスに繰り返し力をかけることで、筋肉の機能回復を改善することが報告された。この改善は、好中球および好中球媒介因子の急速なクリアランス(除去)に部分的に起因し、好中球関連因子の除去がなされなければ筋形成を妨げる可能性があることも示された。

マッサージの効果は「役割が終わった炎症物質や免疫細胞を洗い流し、再生プロセスを前倒しにすること」が本質であったと示唆され、また炎症因子の洗い流しを行うのは、筋肉損傷から3日目以降が理想的であることも判明した。

本研究はマッサージの医学的・生物学的な効果と仕組みが、再現性をもって科学的に示された初の研究であると報道されている。今後、マウスより大きな動物や人間への応用も視野に検証が検討されており、さらなる研究が期待される。

出展:マッサージ効果の科学的解明に成功! 炎症物質を洗い流して回復速度を2倍にしていた 

参考文献:Massage doesn’t just make muscles feel better, it makes them heal faster and stronger

元論文:Skeletal muscle regeneration with robotid actuation-mediated clearance of neutrofhils

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