食べ過ぎ、欠食や間食など食生活の乱れは、肥満・高血圧・脂質異常症・糖尿病や、それらが悪化して起こる心臓病や脳卒中などの生活習慣病につながります。肥満や生活習慣病の発症リスクは、食生活の乱れを改め、運動習慣をプラスすることでも大きく減少できます。効果的で無理のないダイエットや健康な体を維持するために、PFCバランスを意識した食生活を身につけましょう。
PFCバランスとは
PFCは、P(Protein|たんぱく質)、F(Fat|脂質)、C(Carbohydorate|炭水化物)の三大栄養素の頭文字をとった言葉で、PFCバランスとは、摂取カロリーのうちこれらの三大栄養素がどれくらいの割合をおさめているのか示した比率になります。厚生労働省では、「エネルギー産生栄養素バランス」として、生活習慣病の予防・改善の指標となる三大栄養素の目標量を以下のように示しています。
たんぱく質:13~20%
脂質:20~30%
炭水化物:50~65%
例えば、一日の摂取カロリーの必要量が2000kcalだった場合に、この比率をもとに計算してみると、PFCバランスはこのようになります。
たんぱく質:260~400kcal
脂質:400~600kcal
炭水化物:1000~1300kcal
それぞれの栄養素の1gあたりのエネルギー量は、たんぱく質4kcal、脂質9kcal、炭水化物4kcalですから、これをグラム換算するとこのようになります。
たんぱく質:65~100g
脂質:45~65g
炭水化物:250~325g
ちなみにこのグラム数は、食品の重さではないので注意が必要です。例えば、鶏むね肉(皮なし)100gに含まれるたんぱく質量は23.3gになります。炭水化物では、ご飯(白米)150g中に含まれる糖質量は56gになります。このように、食品によって含まれている栄養素量は違うので、いろんな食材を組み合わせて食べることで、必要量の栄養素を摂取していくことが大切です。
たんぱく質は1日にどれくらい必要なのか?
たんぱく質は、体のあらゆる組織の材料となるとても重要な栄養素ですが、1日にどれくらい摂取する必要があるのかご存じない方も多いと思います。PFCバランスを意識した食生活を送るためには、たんぱく質の摂取量について知っておく必要があるので簡単に解説したいと思います。
たんぱく質は、活発に運動をしていない人でも、体重1kgあたり0.8gのたんぱく質を摂取することが推奨されています。ウォーキングや軽いジョギングなど低強度の運動をされている人では0.8~1.1g、1時間程度のランニングや筋トレなど中強度の運動をしている人では1.2~1.4g、1時間以上に及ぶ高強度の運動をしている人では1.5~2.0gのたんぱく質が必要となります。
例えば、体重50kgの人が中強度の運動をしている場合、50kg×1.2~1.4gなので、1日あたり60~70gのたんぱく質が必要ということになります。これを摂取カロリーに換算すると、240~280kcalとなります。先ほどの例で、1日の摂取カロリーの必要量が2000kcalだった場合、たんぱく質の比率は12~14%になります。PFCバランスでは、たんぱく質は13~20%が目安になりますから、このケースの場合は1日のたんぱく質量が65~70g(13~14%)必要という計算になります。
このように、1日当たりのたんぱく質量を知ることができれば、脂質と炭水化物をどのくらい摂取すればよいのか分かるようになります。余分な脂肪を落として、引き締まった体づくりを目指すなら、たんぱく質は最大量の70g(280kcal)を摂取、脂質は最低限の45g(400kcal)に抑え、炭水化物を300g(1200kcal)にすれば、総摂取カロリーは1880kcalとなり、カロリー収支で120kcalのマイナスになるので、計算上では栄養バランスを崩すことなく1ヶ月で500g程度の減量に成功することができます。
実際には、こんなに細かく計算することは難しいのですが、理論上ではこのような考え方になるということを知っておいてください。
過度な糖質制限によるデメリット
ダイエットと言えば糖質制限というイメージを持たれている人が多いと思いますが、糖質(炭水化物)は私たちが生きていくうえでエネルギー源となる欠かすことのできない栄養素です。ですから、持病があったり体質の関係で糖質の摂取量をコントロールしないといけない人は例外として、過度な糖質制限をした食事を続けていると体調不良に陥ってしまう危険性もあります。
特に糖質を完全にカットしてしまうと、糖質を主なエネルギー源にしている脳に必要な栄養が足りなくなるので、集中力がなくなったり、イライラしたり、頭痛がしたりといった不調を招きます。その他、糖質制限によるデメリットを簡単にまとめてみました。
- 低血糖による頭痛や眠気
- 便秘になりやすい
- 下痢や吐き気に見舞われることも
- 口臭や体臭がきつくなる
- 筋肉量が落ちやすい
- 逆に太る可能性
- リバウンドしやすくなる
このように過度な糖質制限には様々なデメリットがありますから、あくまでも糖質をなくすのではなく、必要量はちゃんと摂取するようにしましょう。
PFCバランスは崩さずカロリーコントロールをする
ここまでPFCバランスについて簡単に解説してきましたが、この考え方はダイエットや健康づくりのために食事管理をしている人だけではなく、オリンピック選手など一流のアスリートも同じように、管理栄養士や専門家の指導のもとPFCバランスを意識した食生活を送っています。
無理なく効果的にダイエットに成功したり、健康的な体を維持していくためには、過度な食事制限をしたり、栄養バランスの偏った食事をするのではなく、PFCバランスを崩さず日々の活動量に応じた摂取カロリーになるようにコントロールすることが大切です。
とは言っても、毎日の食事でどのくらいの摂取カロリーになっているのか正確に把握することは難しいですから、まずは大まかで構いませんので、PFCバランスを意識した食生活を送ってみてください。例えば、たんぱく質は自分の握り拳くらいの量はあるかな、揚げ物や脂身の多いお肉は控えめにしよう、炭水化物はお茶碗のこのくらいまで、という感じです。
そして、少しずつその食生活に慣れてきたら、食品に含まれている各栄養素の摂取量をネットなどで調べてみて、理想的なPFCバランスによる食生活に近づけれるようにしてみましょう。正確なPFCバランスではなくても、その意識を持って食生活を送っていれば、体には良い意味での変化を感じることができるはずです。
ぜひ、今回の記事を参考にしていただき、少しずつでも出来ることから始めてみて下さい。